「業務改革」とはBPR「Business Process Re-Engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」の訳語であり、業務全体を再構築することを意味します。
業績の悪化や環境の変化、競争の激化への対策として「システム化」を急ぎたいが、今動いている既存業務を新システムの都合に合わせなくてはならない、という事情がある場合に「業務改革」という手法が外部から持ち込まれるケースが多いようです。外部セミナーで知った、またシステムベンダーから勧められた、といった他発的動機です。
「改革」という言葉は感覚的にも激しい表現であり、0→100へと今まで考えもしなかった、または怠ってきた事を一気に取り返そうとするような、少々強引さも伺えます。
長年自社でもわかっていなかった、社内で改善出来なかった業務全体の改革をやりとげてくれるシステムやコンサルはあるのでしょうか?また任せて大丈夫なのでしょうか?
業務改革コンサルティングとは
業務改革・業務改善を精一杯やってきたつもりだが一向に成果が見えない、またはシステムリプレイスの前に、今まで蓄積された問題解決を済ませておきたい等、社内のパワーだけでは無理、と判断した時に「外部コンサルにお願いする」という行動を取ることが多いようです。
「業務改革をやる」事は決定されているが、何をどのように進めれば良いのかを社外の第三者に委ねるという、奇妙なお膳立てが出来上がるわけです。さて任されたコンサル側は具体的に何をやってくれるのでしょうか?
業務の可視化
まず手始めに、コンサルから「では、業務フロー図を拝見しましょう」と言われてうろたえる事になります。次に「業務マニュアル」の整備状況や公開方法を指摘されます。
業務フロー図も、業務マニュアルも存在しない、という事は「可視化」(見える化)ができていないという診断がなされます。
「業務の可視化」は正論ながらほとんどの企業でできていない事であり、逆にできていればコンサルにお願いする必要はなかったかもしれません。コンサル側は百も承知で「あるはずのないもの」の提示を求めるのが常套手段です。
また「可視化」(見える化)のレベルは部署内である程度できていても業革的には失格で、全社レベルで様式が標準化され適切に公開されていることを求められます。ここで慌てて「文書管理システム」や「ワークフローシステム」を購入して失敗する事例があるので注意が必要です。
問題提起
「業務の可視化」を進め、業務全体を見渡しながら「改善すべき課題」を抽出して行きます。ここで抽出された課題は一元的にコントロールされていないことが原因であることから、「標準化」の必要性を提起されます。
わかりやすい例として「社内情報」の様式や作成方法、公開方法があります。作成段階で部署をまたがる場合の情報の受け渡し方法、いつ誰にどのように公開するのか?他の情報との重複欠落、優先度合いは「標準化」されているのか?という点です。
また「社内報告」「社内申請書」もよく問題提起される対象となります。報告の到達範囲やルートは適正か?末端の情報が経営層にまで届くように設計されているか?部署毎に作った申請書の配布方法や様式がバラバラではないか?自部署に必要な項目だけを対象にするため類似の申請が重複していないか?等々です。
「標準化」できていない、という指摘に対して単純に「標準化」すれば良いのだ、と一夜漬け式に対応したり、システムを導入して失敗することがありますので、ここでも注意が必要です。「申請書」の外見が標準化されていないのではなく、その背景にある「業務」が標準化されて来なかったことが原因だからです。
改善案策定
具体的な改善実施項目を、コンサル側から提案することはありません。依頼企業側が立案できるようにサポートすることがコンサルの役割りである、とする場合がほとんどです。
コンサルタント会社によっては、改善の最終ゴールをIT製品、昨今では高額な「※ERPシステム」導入に据える場合が多々あります。指導された課題を実現させるにはシステムが必要なので迷わず「購入」という結果となります。最強の営業活動ですね。
※ERPシステムとはEnterprise Resource Planningの略称で、統合基幹業務システムと訳されています。
効果測定
改善内容が確定すると、現状の測定と改善目標を設定します。改善目標とは数値で計測できるものであることが前提で、依頼企業で過去用いられなかった指標がしばしば導入されます。
KPI(Key Performance Indicators)「重要業績評価指標」という用語と、全社員に対し行動の変更が求められます。
これにより新しい視点で「現状把握」「目標の周知」「効果測定」が数値化され、改善の成否を客観的に評価できるようになります。
例えば今までは「売上高」至上主義であったものを、新KPIとして「一人当たりの労働生産性」とする、等です。
ここでも組織別、期間別にKPIを算出し公開するために専用システムを導入して失敗するケースがあります。
注意すべき点
外部へコンサルティングを依頼する企業に共通して言えることは、「業務改革をやる」ことだけが決まっているが内容は決まっていない、という奇妙な状況です。
またなぜ「業務改革をやる」のかと言えば、「システムを購入」するから、新システムに業務を合わせなければいけないから、というこれも奇妙な動機です。
外注できない大切な要素
「見える化」が業務改善の基盤であることは事実なのですが、改革を担当するプロジェクトメンバーが、業務フロー図や業務マニュアルを業務部署に代わって手作りしようと頑張ってしまうのは間違いです。
また「標準化」はできていない部分を穴埋め式に標準化すれば良いのではありません。
システムを購入するから「業務改革」をすることになった。改革を進めると「可視化」「標準化」ができていないことがわかり専用システムを購入した。さらに最終ゴールである「統合基幹業務システム」を導入して「効果測定」をするためにも専用システムを購入した
フォーマットを統一しても改廃は常にある
また「見える化」のために専用のメニューを新規導入して失敗する例もあります。
「標準化」はできていない部分を穴埋め式に標準化すれば良いのではない
業務標準化しか生み出さない環境づくり、時間がかかる
お金をかけない業務改革
改革には高価なシステムが必要であるはずはありません。
すべてEXCELでできてしまいます!