人口減少と少子高齢化によって人手不足が深刻になっています。この労働力不足を解消する施策として打ち出されたのが「働き方改革」であり、具体策として動き出しているのが「長時間労働の是正」です。
労働力不足を解消するために労働時間を短縮すれば、計算上は成り立つことはわかりますが、どのようにして労働時間を短縮するのか？という中身の問題は各企業の取り組み次第ということになります。
「残業禁止」等、表面上の労働時間の圧縮で解決するような問題ではない、根本的に業務のありかたを改善し生産性を上げなければ、解決どころか競争力を失う等の経営全体への打撃が心配です。
労働時間に関する制度の見直し
「働き方改革関連法案」（働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 2019年4月施行）のうち労働時間に関する制度の見直しが、中小企業では2020年4月から施行されます。
働き方改革の中でも特に中心となる「月45時間、年360時間を原則とし、臨時で特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満（休日労働含む）、複数月平均80時間（休日労働含む）を限度に設定」等の制度見直しが行われます。
メリット
長時間労働が原因で心の病や心臓病、ときには過労死をも引き起こすことがありますが、労働時間短縮によって、労働者は健康的な生活を取り戻すことができます。健康な労働者により生産性は向上するので企業にとってもプラス面が多い、とされています。
心配な点
表面的な労働時間圧縮だけでは、成果もそれなりに減少は避けられず、人手不足と相まって企業の生産力、競争力を奪い取る心配があります。
そこで労働の「中身」の改善が必要になってきます。
労働の中身の改善
企業活動に悪影響を与えずに総労働時間を短縮するためには、「効率の改善」「生産性の向上」に取り組まなければなりません。
業務効率を改善するにはどのような方法があるのでしょうか？
業務改善とBPR
「業務改善」とは、ある単一業務を行う中で発生している問題を取り除くことで、業務単位で小規模な改善をくり返すことを指します。
一方、BPRとは「Business Process Re-Engineering（ビジネス・プロセス・リエンジニアリング）」の略称であり、業務全体を俯瞰的に見直し、新しい価値を生み出すためのプロセスを全社レベルで再構築することを指し「業務改革」と表現されています。
BPRの歴史
日本ではバブル後の経営効率改善策としてBPRが盛んになりましたが、当時はBPRの手法の先には必ずIT製品が紐付いており、IT製品の乱立に繋がったという苦い経験があります。悪く言えばIT製品販売の手法としてBPRが利用されたのかも知れません。
このBPRが「働き方改革」を実現するための手法として、今注目されています。
「働き方改革」実現のためにBPRを導入した結果、必要のないITシステムも導入してしまったという、メーカー主導の失敗は繰り返さないように、自主的な活動にしたいものです。
リフォームとリノベーション
住宅の改装にも「改善」と「改革」に似た発想として、「リフォーム」と「リノベーション」がありますので比較すればイメージしやすいと思います。
リフォームとは「老朽化した建物部分を建築当初の状態に戻すこと」であり、建築時の価値を上回らない「原状復帰」の意味合いが強いようです。古くなったキッチンやトイレを新品に入れ替えたり、汚れた床や壁紙を張り替えるなどの単体の入れ替えレベルを「リフォーム」と呼んでいます。
いっぽうリノベーションとは「もともとの設計を変更改善することで、全体の価値を高めること」を目的としており、「原状復帰」よりも「新しい価値創出」をめざす行為と言えます。
外観は古き良き京の町屋、中は近代的でおしゃれなリビング、良い伝統は残しながら変えるところは大胆に変えるといった町屋リノベ―ションの発想は、新しいものに走りがちな業務改革にとって参考になります。京の町屋リノベ画像
お城のリフォームとリノベーション
お城は「石垣」と「天守閣」でできていますが、戦闘用の実質的な「城」としての機能は石垣が持っており、天守閣は戦国時代が終わってからの「権威の象徴」であった、とも言われております。
お城のリフォームとは、取り替え可能な天守閣の部分補修であり、石垣が支えられる規模に限られます。一方リノベーションは、実質的な機能が必要になったために石垣も含めた大規模な設計変更を決断した事情が想像できます。
お城を会社に見立てると石垣は業務現場で働く人達であり、天守閣はこの会社の「企業ブランド」と言えるかもしれません。お城を会社に見立てると
業務のリフォームとリノベーション
ある単一業務を行う中で発生している問題を解決するために、単一システムを新規導入したり、新しいものに入れ替えることはリフォームと言えます。
一方、新しい価値を生み出すためのプロセスを全社レベルで再構築するために何か適当なシステムを導入すれば良いのか？と考えるのは大きな間違いです。バブル後のIT乱立で懲りているはずです。
装置を購入すればもれなく業務改革が成功する、などという事は起こりません。
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