下流へ向かうのみ
ウォーターフォール、ERP、RPAという用語を我々業務側の人間はどう理解すれば良いのでしょうか?
システム開発者はスタート地点を「装置」と考える習性がありますが、業務側の人間は与えられた現状を遡って再設計することが苦手です。
川の流れをイメージして考えてみましょう。
ウォーターフォール型開発
ウォーターフォール(waterfall)とは「滝」のことであり、システム開発手法の一種として「ウォーターフォール型開発」という用語が用いられています。滝のように上から下へ流れ、後戻りはできないという意味合いでもあります。
1970年代、日本企業がシステム導入をはじめた頃は「ウォーターフォール型開発」が主流であり、そこへ「メーカー主導」がプラスされたシステム開発の結果できあがった産物には誰も文句は言えない、といった少々皮肉な意味も含まれていました。
案の定、システム提案時には「OA化」「ペーパーレス化」などと夢が広がるシステムだったはずが、出来上がってみれば業務現場にとっては業務の流れを寸断するもの、欲しい情報が抜けている、補完作業が必要になったりと業務現場にとってマイナス面も多いながら、このスタイルは現在も続いているのが実情です。
ERP
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、統合基幹システムの略であり、バラバラに開発して来た業務ソフトを1つに統合したパッケージソフトウェアです。
従来なら「人事」「給与計算」「会計」「販売管理」は別物であったのが、ERP化により一元的に管理できるようになります。
従来システム間の情報受け渡しを人間経由で行っていたり、同じデータをあちこちのシステムへ人間が入力していたりと、重複していた作業を一元化できるようになり、一元化の結果情報が可視化できるようになる、といった「インプット」「アウトプット」の整理が進む等のメリットがあります。
しかし「ERPを導入したのに却って業務の負担が増えた」という声が聞こえてくるのは何故でしょうか。
治水
システム開発を「治水」に例えるとわかりやすいと思います。
人類が農耕生活を始めたことで治水が必要となりました。水を利用するのは下流であり、川が氾濫すると場所を変えざるを得ません。居場所を変えることなく水を利用するには、治水の技術が必要になるというわけです。
いったん流れたら止められない、とするのがウォーターフォール型の考え方であり、川の上流なら統合は可能、とするのがERPの考え方かも知れません。
最近でも災害時には下流では氾濫が発生し、家が流されるという被害が多発していますが、災害を予測し、大量の水量をコントロールすることの難しさを象徴しているかのようです。
RPA
RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略語で、「ロボットのようにPC作業過程を自動化する装置」を指します。
RPAは人間が与えた指示(シナリオ)を忠実に実行しますが、シナリオとはパソコン上で行う動作を順番に細かく登録したもので、実行時刻が来ると、登録されたシナリオの動作をその通り実行することが「RPAの役割り」と言えます。
人間に代わるロボットという肩書きでデビューしましたが、代行する作業はRPA自身が決めているはずはなく、結局は人間が依頼しているのです。
EXCEL業務
RPAはパソコン上で実行する動作の代行はできますが、EXCELというアプリケーションになり変わる事はできませんので「RPAがエクセルに取って代わる」などという心配をする必要はありません。
RPAがEXCELというアプリケーションになり変わる事はできない、言いかえればEXCELでしかできない業務とはどのような業務を指すのでしょうか?
RPAとEXCELのどちらでも出来る作業は「定型操作」だけです。
「定型操作」以外の全操作がEXCELにしかできない、RPAにはできない操作と言うことができます。ではこのEXCELにしかできない、とはEXCELが自発的に処理している?ということでしょうか?
人間の役割り
「定型操作」以外の全操作はEXCELにしかできない、という事は言い換えれば、定型操作以外は全て人間が関わる「人的エクセル業務」を指していると言えます。
もしも社内の全業務が100%完全に自動化・システム化できているのなら「人的エクセル業務」など存在しないはずなのですが、システムの届かない部分を補ったり、システム間の連携をあの手この手で繋いだり、アナログ情報をシステムへ入力したり、システムから出たデータをわかりやすい帳票に再加工したりといった内容です。もつれた糸を解きほどくような「人的エクセル業務」は無数に存在し、企業が存続する限り新しい課題は増え続けているのです。
エクセル業務には「自動化可能部分」と「開拓部分」2つの側面があって、すべてをRPAに代行させる事はまず考えられません。「脱EXCEL」などと言い出す人は2つめの側面、つまり未開拓のアナログ業務を人間の手でEXCEL化することの苦労や重要性がわかっていないのです。
人間の手で「定型化」できた業務からRPAに任せ、人間はもっぱら増え続ける未整理業務を整理し、「定型化」してRPAへどんどん依頼できるようになれば会社全体の生産性は飛躍的に改善され続けます。
未整理業務を整理、定型化=「業務の標準化」実現の為にはエクセルは都合の良い道具と言えます。本来の「標準化」とは、個別業務からボトムアップ式に結実した産物であるのが正常な姿です。
業務の標準化
個別業務の「定型化」を積み上げることから「標準化」は生まれます。
しかしエクセルで処理することが多い個別業務は、パソコン作業でありながら把握し辛く、個人任せのまま放置されることも多く、把握が困難となってしまう傾向があります。
個別業務を正しく積み上げ、「標準化」させるためには、まずは「業務の見える化」が必要となります。
エクセル業務の見える化
エクセル業務の見える化 → 標準化 → RPAフル稼働(コストメリット)
見えなかった個別業務も、業務の処理手順が「定型化」できればRPAに教え込むことでRPAとしても本領を、またフル稼働によるコストメリットを発揮できることになります。
時に「属人化」「ブラックボックス」と非難されるエクセル業務は、早急に「見える化」させることが必要です。見える化によって、個別業務はひとつの強固な基礎として認識されることになり、基礎の上に新しい価値が創造されることが可能となります。
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RPAはこんな地盤・基礎の上だけに成り立つ → 開く
社内フォームの標準化にはこんな環境が必要 → 開く
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